雪崩の如きスケーリングを誇るAvalancheとは？

長い間、「クリプト」という言葉は、たった一つのブロックチェーンと同義語でした。ビットコインです。しかし、イーサリアムが成長し、その優れた処理時間とProof-of-Stakeコンセンサスによって、数多くの分散型アプリケーション（dApps）が構築されるようになると、状況は一変しました。この2つのブロックチェーンはしばらくの間、世界を席巻していましたが、その独占状態もまた終わりを告げました。

現在では、独自の機能と利点を持つ新たなブロックチェーンが、トップの座を争っています。

前回、Solanaを紹介しましたが、今回は、Avalancheを紹介します。

歴史

Avalancheの物語は、コーネル大学のコンピュータ科学者Emin Gün Sirerから始まります。彼は、2002年頃から暗号通貨の分野で著名な人物であり、この分野では極めて初期から関与していた人物です。

Vivek VishnumurthyとSangeeth Chandrakumarと共に、彼はBitcoinの6年前に「karma」という概念的なピアツーピアの仮想通貨を開発しました。また、サトシ・ナカモトがビットコインのホワイトペーパーを発表した頃に立ち上がったサイファーパンク・ムーブメントにも積極的に参加し、ビットコインの最大の欠陥の一つである「セルフィッシュマイニング」を発見し、その解決策を開発したことでも知られています。また、ハッキング事件で有名なThe DAOが消滅する直前には、そのセキュリティ上の重大な欠陥も発見しています。

Avalanche自体の物語は、2017年5月にTeam Rocketという匿名グループ（ポケモンで主人公サトシに対抗するロケット団という構図が元ネタ）が、新たな構造をもつコンセンサスとして『Snowコンセンサス」を公開したところから始まります。これらは、ビットコインやイーサリアムが取引の検証に使用している既存のプロトコルを改良したものでした。その直後、彼は教え子のKevin SekniqiとTed YinとともにAva Labsを立ち上げ、2019年に大手ベンチャーキャピタルが参加するAVAXトークンのシードセールが行われ、Avalancheが誕生しました。（余談ですが、今これを作成している私はセールの数ヶ月前にAvalanche Japanを立ち上げています）

特徴

高速で、低コストで、環境に優しい
Avalancheは、「高速で、低コストで、環境に優しい」ことを前面に打ち出しており、その主張を数字で裏付けています。Avalancheは、1秒間に4500件以上のトランザクションを実行することが可能です（ビットコインは7TPS、イーサリアムは14TPS）。この数字はSolanaのような新しいブロックチェーンに匹敵するものであり、Avalancheの特徴は、非常に短い取引確定期間（取引を検証してブロックチェーン台帳に永遠に記録するのにかかる時間）であることです。Ethereumは6分、Bitcoinは1時間であるのに対し、Avalancheは1秒以下で取引を検証し、確定させることが可能です。

Avalancheは、「ファイナリティにかかる時間で測定した場合、ブロックチェーン業界で最速のスマートコントラクトプラットフォームである」と言われています。また、このプラットフォームでは、ステーキングと数千のノードを使用して、コストと炭素排出量を低く抑えています。

こうした機能性により、多くのDeFiプロジェクトがAvalancheに魅了され、「金融のために設計されたブロックチェーン」とも呼ばれています。

コンセンサスプロトコル

Avalancheの特徴は、Ava LabsとTeam Rocketのチームによって設計された、独自のコンセンサスプロトコルにあります。このプロセスは、サブサンプル投票の繰り返しによって機能し、ネットワーク上の何千ものバリデータによって支えられています。

トランザクションが入力されると、バリデータは他のバリデータのランダムなグループに、そのトランザクションを受け入れるべきか拒否すべきかを尋ねます。もしそのトランザクションが無効である、他の取引と競合している、既に拒否されているあると思われる場合には、そのトランザクションは「いいえ」に投票されます。それ以外の場合、そのバリデータは「はい」に投票することになります。サンプリングされたバリデータのうち、十分な数のバリデータが「はい」と答えると、 オリジナルのバリデータはそれを受理します。十分な数のバリデータが賛成票を投じない場合、元のバリデータは却下されます。

ほとんどの場合、トランザクションはすぐに承認され、確定されます。矛盾や議論の必要なトランザクションについては、バリデータはすぐにその周りに集まって確認します。この一連のプロセスは、実際には迅速に行われます。

このプロセスはAvalancheコンセンサスプロトコルと呼ばれ、他のPoSブロックチェーンで使われているクラシカル・コンセンサスプロトコルやナカモト・コンセンサスプロトコルの代わりに使用されています。Avalancheは、どのPoSプロトコルよりも、その活動を保証するバリデーターが多い と言われています。

サブネット

Avalancheのもう一つのユニークな特徴は、サブネット（プライマリ・Avalancheネットワーク上で特定のブロックチェーンを確認するバリデーターの小規模な別グループ）です。このサブネット構造は、「規制遵守を管理可能」にします。これは、Avalanche上に構築されたDeFiアプリケーションをサポートする大きな利点です。

サブネットを確立することで、クライアントはバリデーターを特定の国に限定したり、KYC/AMLチェックを要求したり、ライセンスを要求したりといったルールセットを、必要な法的遵守事項に対応して自由にカスタマイズすることができます。このサブネットを使用することで、プライマリー・Avalancheネットワークの分散性と匿名性を損なうことなく、特定のブロックチェーン機能をより安全にすることができるのです。

エコシステム

AVAX
AVAXは、Avalancheのネイティブトークンです。AVAXは料金の支払いやステーキングによるネットワークの安全確保、サブネット間でのアカウント単位として使用されます。nAVAXと呼ばれる0.000000001 AVAXの価値のあるフラクショナルユニットは、マイクロペイメントに使用されます。

AVAXの供給は、希少性を生み出すためにハードキャップされており、AVAXの現在の時価総額は210億ドルです。

3つのチェーンを内蔵

Avalancheは、エクスチェンジチェーン（X-Chain）、プラットフォームチェーン（P-Chain）、コントラクトチェーン（C-Chain）の3つのチェーンを内蔵しているのが特徴です。これら3つのチェーンは、プライマリネットワークによって検証され、保護されています。

エクスチェンジチェーン（X-Chain）
X-Chainは、デジタルスマートアセットを作成・取引するための分散型プラットフォームです。これは、現実世界の資源（株式、債券など）の「表現」として機能し、「明日まで取引できない」「米国市民にしか送れない」など、特定のルールを規定することができます。これも金融に特化したAvalancheの特徴であり、AVAXはX-Chainで取引されています。

プラットフォームチェーン（P-Chain）
P-Chainは「Avalancheのメタデータブロックチェーンであり、バリデーターを調整し、アクティブなサブネットを追跡し、新しいサブネットの作成を可能にする」ものです。P-Chainは、Avalancheのコンセンサスプロトコルに電力を供給します。クライアントは、P-Chainを使用してサブネットを作成し、管理することができます。

コントラクトチェーン（C-Chain）
C-Chainは、Avalanche上でスマートコントラクトを作成するために使用されます。C-Chainは、既存の暗号プロジェクトとの統合を容易にするため、Ethereum仮想マシンを使用しています。

アプリケーション

Avalancheは低コストで高速であることから、特にDeFi領域の開発者に非常に人気のあるブロックチェーンとなっています。ここでは、Avalanche上に構築された最も人気のある著名なdAppsをいくつか紹介します：

• Aave— 暗号資産を貸し借りするためのこの大規模なプロトコルには、50億ドルの資本を持つ専用のAave市場が存在します。
• Curve — ステーブルコインを交換し、流動性プールからの利回りを最大化するこの人気ツールは、Avalancheネットワーク上で実行することで利便性が向上します。
• Topps NFTs— 世界で最も有名な野球カードメーカーToppsは、Avalancheを使用してNFTコレクティブルを発行しています。
• Metamask— 最も人気のあるウォレットプロバイダである Metamask は、Avalancheで実行するように設定することができ、その速度と低コストを活かした利用が可能になります。

Pontem Networkについて

Pontem Networkは、Metaが創設したパーミッションブロックチェーンDiemに最適化された実験プラットフォームです。Pontemが提供するインセンティブ付きテストネット、Move VMスマートコントラクトプラットフォーム、ローコード開発ツールPontem Blocksにより、Diemを利用したメタバース向けプロジェクトを設計しようとしている開発者に、最適な開発環境を提供します。

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